IT業界職種研究

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第2章:モデラーに必要なスキル

モデルを作成する上で必要なのは、「考える力」です。
特に、因果関係を明らかにする「論理的思考力」、あちこちでばらばらに発生している問題を一般的に捉える「抽象的思考力」が重要になります。

モデラーも最初から理想的なモデルが描けるわけではありません。
モデラーはステップを踏んでより上位のレベルに上がっていきます。
モデラーの段階を、茶道や武芸でよく言われる「守破離」という心構えに例えて説明していきます。

茶道や武芸の「守破離」は以下のようなものです。

「守」 師からの教えを厳守する。決められた型や作法に忠実に従う。
「破」 知識、経験を重ね、師の教えを基本としつつ、その教えの本質を理解し自分なりの改良を加える。
「離」 これまでに教わった型や作法にとらわれず、新たな自分独自の境地をつくり上げていく。

これを、モデラーの段階に当てはめると以下のようになります。

「守」

先輩社員が作成した一部分をお手本(パターン)として、他の部分を同じように、モデル化していく段階です。このお手本(パターン)は一般的なものがある程度存在します。それはビジネスパターン、アナリシス、デザインパターンなどです。

このパターン(お手本)が非常によく形式化されている例はファーストフード店です。いつどのような台詞を言うか、「いらっしゃいませ、こんにちは。」と服装や挨拶からはじまって、作って一定時間経過したハンバーガーは廃棄処理するなどが事細かに定義されています。そのため、アルバイトでもすぐに対応できます。しかし、モデラーのパターン(お手本)には、ファーストフード店より裁量の余地があるので、この段階を卒業するのにも少し時間を要するでしょう。

この「守」でモデル化を繰り返して行なっているときに重要なのは、「なぜそのようなモデルにしているのか?」というその理由を考えることです。そのように考えていくことで、モデルを独力で作成する力が付き、次のステップに進むことができます。

「破」

モデル化の本質を理解している状態です。ここでは、既存のパターンを組合わせることで、また、必要に応じてパターンを改良することで、新たな題材もモデル化することができる段階です。

ところでこの段階に達した人が複数、同じ題材に対してモデル化を行なった場合、必ずしも全ての人が全く同一のモデルを作成するとは限りません。とはいえ、モデル作成領域のその本質を理解しているので、これらのモデルの相違点については、問題になりません。どのモデルも本質的なところでは同じなので、他の人のモデルとの相違点についても互いに理解できるようになっています。

ときどき「モデリングには正解がいくつもある」と言われるのは、このような意味からです。もちろん正解がいくつもあるといっても、許容範囲内と許容範囲外のラインはあります。ただ残念な事に、このレベルの人は、たとえそれが本質に関わらない小さな差異であったとしても自分のモデルに絶対の自信とプライドを持っており、互いに譲らない傾向があるようです。流派の対立のようなものでしょうか。

「離」

このレベルになると、ある一企業のモデル化を行ないながらも、その業界、業種に通用するような、新たなパターンをつくりあげる事ができます。その際は流派にこだわらず、必要に応じて、適切なモデル化の手法、開発プロセス、ツールを取捨選択します。

次回は、これからモデラーを目指そうという方へ向けたメッセージをお話したいと思います。

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