注目企業インタビュー

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株式会社アドバンテッジリスクマネジメント

従業員のメンタルヘルスケアが極めて重要な時代に、ITを駆使して企業の健康経営をリード。今、新たなステップを踏み出し、IT人材の拡充に取り組む。

執行役員
DX本部担当 兼 DX本部ディビジョンマネジャー
吾郷 真治 氏
DX本部 DX開発部
プロジェクトマネジャー
水守 良幸 氏
近年、多くの日本企業が注目する「健康経営」や「ウェルビーイング」の分野にいちはやくITを活用、トップクラスの実績を上げている企業がアドバンテッジリスクマネジメントだ。
社員の健康をチェック、改善するシステムやプラットフォーム、コンサルティングやカウンセリングを含む多様なサービスを提供し、高い評価を受けてきた。今、システムのさらなる強化、利便性の向上などをめざし、内製化を高めるべく、IT人材を求めている。同社のDX本部を率いる吾郷真治氏、水守良幸氏にその考え方、事業内容、人材観などを語っていただいた。

※法人名、組織名、役職およびインタビュー内容は取材当時のものです。

GLTDの普及から見えたメンタルヘルスケアを事業に

アドバンテッジリスクマネジメントは、外資系コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーのコンサルタントだった鳥越慎二氏が、1995年に起業し、GLTD(団体長期障害所得保険)を扱ったところから始まった。

GLTDは病気などによって長期間働けなくなった人に対して所得を保障する損害保険の一種で、個人ではなく、法人が加入する。つまり企業が福利厚生の一環として導入するものだ。日本にはない制度だったが、当時、厚生労働省が認可したことで鳥越氏はその普及を予感したのである。GLTDは最初は外資系企業に、続いて日本の大企業へと広まっていった。

日本でGLTDが普及していくに従い、メンタルヘルスの重要性がわかってきた。GLTDによる休業の原因を分析すると、メンタル系疾患によるものが多く、しかも近年はそれが増加傾向にあったからである。

社会的にも日本でしばしば見られる過労死につながるような労働慣行への反省があった。また雇用流動性が高まる中で、人材確保・採用のためにメンタル面の労働環境は重要になっていた。人事や労務担当者にとっては見過ごせない分野になっていたのである。

執行役員
DX本部担当 兼 DX本部ディビジョンマネジャー
吾郷 真治 氏

そこでアドバンテッジリスクマネジメントは、米国のEAP(Employee Assist Program/従業員支援プログラム)も参考にしながら、日本独自のメンタルヘルスケアのサービスを構築した。これは従業員にストレスチェックを実施し、その結果に応じてカウンセリングなどを受けてもらい、メンタル疾患を未然に防ごうというものだ。「データを分析する、企業人事や従業員にフィードバックを含めてデータをどう提供するかをきめ細かく、深く考えていく。ここが当社の先駆的な点でしょう。現在、HR(Human Resources)テック企業は増えてきていますが、メンタルヘルスケアやカウンセリングという切り口から始めた企業は少ないと思います」(吾郷氏)。

やがて、労働安全衛生法が改正され、2015年からは従業員50人以上の事業場に対してストレスチェック制度が義務化されるなど、法規制における追い風も吹いた。

健康やストレスのデータを可視化できるSaaS

アドバンテッジリスクマネジメントでは、ストレスチェックからカウンセリングや保健指導に至る領域でビジネスを展開している。ここにITを活用し、多種多様なソリューションを提供している。

「アドバンテッジpdCa(ピディカ)」は企業組織の課題をパルスサーベイによって、エンゲージメント調査、メンタルヘルス調査を実施、可視化して解決に役立てることができるシステム。具体的には従業員のメンタル系不調の解決、研修効果の検証などである。「アドバンテッジ タフネス 」シリーズは、メンタルヘルスケアを総合的に支援する。サーベイによってストレスチェックを実施、従業員のエンゲージメント向上に役立てるプラン、カウンセリングサービスを提供するプランなどをそろえている。

また「アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」は、もともと創業者の構想としてあったものを、吾郷氏が具体的なプロダクトとして立ち上げた。「ストレスチェック以外にも組織や個人に紐づいたさまざまなデータがあり、それらを活用したサービスやソリューションもあります。そこでこれらを接続し、相関させ、ナレッジ化してさらに高度なアドバイスができるようにしたい。それを実現できるプラットフォームです」(吾郷氏)。

顧客企業の立場から言えば、さまざまなデータを集約、可視化し、一元管理できるのが理想である。「例えばストレスと勤怠状況の関係を可視化し、原因を捕捉するなど、さまざまな相関を導くことができます」(吾郷氏)。
これらのほか、アドバンテッジリスクマネジメントでは、健康経営支援サービス、カウンセリング、各種の教育・研修プログラム、GLTD販売など、多種多様なサービスを用意している。顧客企業がそれらを状況やニーズによって組み合わせて導入、健康経営を支援に役立てることができる。

また休業全般に見られる課題として、会社と従業員の間の接触やコミュニケーションが一定期間中断されることがある。休業はケガやメンタル疾患を含む病気のほか、出産・育児、介護などによっても発生する。

そこで家庭と職場の両立支援事業として、SaaSである休業者管理・支援システム「ADVANTAGE HARMONY」を立ち上げた。

「お客様に合わせて業務プロセスを自動化、人事担当者と休業者が安心してコミュニケーションできるセキュアな環境を提供しています。休業スケジュールやタスクの実行、復職への支援、復職後のフォローなどを可能にし、人事の業務を効率化します」(吾郷氏)。このシステムは現在、事業部に移管され、多くの企業に利用されている。顧客企業としては大企業が並び、規模も従業員数も多いため、事業部やグループ企業ごとに導入するケースも少なくない。

DX本部 DX開発部
プロジェクトマネジャー
水守 良幸 氏

そして現在、アドバンテッジリスクマネジメントが挑戦しているのはその次の段階である。

「現行のシステムは、ビッグデータを使った可視化をベースに、従業員のストレス度などを偏差値化しています。しかし一般社員がエクセルのグラフなどを見ても、数値が示す意味を即座に理解することは容易ではありません。そこで生成AIが、データの特徴から、個々の従業員が自分の現状の課題をどう読みとるか、どのようなアクションをとればよいかを説明する手法を検討中です」(水守氏)。現在、そのためのタスクフォースを立ち上げ、顧客がデータをリアルタイムに活用できるしくみづくりに取り組んでいる。「この数年で生成AIの性能が飛躍的に向上したこともそのきっかけとなっています」(水守氏)。

内製化率向上をめざし、人材採用に注力

これら一連のシステムを開発してきたのは、吾郷氏が率いるDX本部である。本部には大きく二つの業務があり、一つは社内DX(いわゆる社内SEの業務)、もう一つは顧客企業向け業務である。「プロダクトごとにプロジェクトマネジャーとメンバーを配置し、プロジェクトを管理しています」(吾郷氏)。アドバンテッジリスクマネジメントはプロジェクト管理に集中し、具体的な開発はベンダーに委託する形である。

一方、実際に人が動き、対面するサービスについてはメンタリティ・マネジメント事業本部に、100人以上のカウンセラーを手配できるソリューション部隊があり、ここで対応している。

アドバンテッジリスクマネジメントは現在、システムの内製化率を高めようとしている。「SaaSと言っても非常に多彩で、サービスも多く、開発ベンダーもさまざま。それらを一元管理するための手法には、例えばSSO(シングルサインオン)、認証基盤への合致などがありますが、これには手間がかかります。まして大企業の場合、部署は多く、要望も多彩なので、必要な対応や手続きも多くなります。個別のプロダクトごとに対応していたら大変な労力になってしまいます」(吾郷氏)。

そのため、顧客企業の利便性をさらに高め、コストをさらに下げることをめざして、システムを、ワンプラットフォームに見えながら、さまざまなサービスを組み合わせられるものにしたい、と考えている。より柔軟なシステムにし、SaaSとしての機能を強化していく。

「それにはプロダクトごとに縦割りで開発するのではなく、なるべくプロダクト同士をつなぎ、開発は内製化に振り切ろう、と考えました」(吾郷氏)。

この動きの中で、中途採用の方針も変えた。これまでは主にプロジェクトの開発経験者を採用してきたが、現在はアジャイル的に開発を進め、(外部ベンダーに発注せずに)、開発を社内で完結できる人材を求めている。

アドバンテッジリスクマネジメントが業績好調で、M&Aなどで業容を拡大していることも背景にある。特定保健指導サービスを事業とするフィッツプラス、クラウド型健康管理サービス(産業医サービスなど)を事業とするメディプラットを100%子会社化した。「新しいグループ企業や事業が増えることで、シナジー効果を出すことも必要です。アドバンテッジリスクマネジメントにおけるITの役割が増していると言えます」(吾郷氏)。

DX本部としては、アジャイル開発を手がけるチームの数を増やし、開発体制を強化しようとしている。

「一般に、短期間で一気にある規模のシステム開発を行う場合は、ベンダーにアウトソースしなくては不可能。しかし当社は既に完成されたシステムを土台にブラッシュアップできる段階に入っていますから、プロジェクトによって内製なのか、アウトソースなのかを検討し、その比率を最適にするように考える必要があります」(吾郷氏)。
中途採用人材に対する期待としては次の二点がある。

「一つはアジャイル開発のノウハウや経験を持ち、2、3人からなるアジャイル開発チームをまとめられる人。もう一つは、当社は自主事業を展開している企業ですから、自分がこうしたいという思いのある人。企業としてのビジョンに対し、自分ならこうしてみたい、ああしてみたいと、エンジニア視点でプロダクトをブラッシュアップするアイデアを出していける人が理想です」(水守氏)。
さまざまな技術が必要なので特に固有のスキルが求められているわけではないが、最近の例を上げると、フロントエンドの開発経験や、生成AIなどの先端技術知見なども歓迎している。しかし求められるのは、新しい技術をキャッチアップできる能力、意欲だろう。

DX本部の任務はITやDXを駆使して、より強いサービスを作り出すことだ。「エンジニアとしてのスキルが優れているだけでなく、私たちの事業に対する興味、共感があった方が望ましいと考えています」(吾郷氏)。アドバンテッジリスクマネジメントは受託開発業者ではなく、自主事業者である。働き方、健康経営、従業員福祉など、アドバンテッジリスクマネジメントの自主事業についての興味、関心があることが仕事への意欲、ユーザビリティについての発想などにもつながる。

働きやすく、人を大切にする労働環境

吾郷氏も水守氏も共に、通信系大企業などでのキャリアを持つ中途入社組である。その目から見てもARMは非常に人を大事にする企業だという。納期もタイトなことはなく、現実的な範囲に納められている。

「女性社員が多く、産休もとりやすい体制です。産休などの事情も織り込み、業務も最初から100%稼働という考え方はせずに余裕を持たせています。また休業からの復帰のとき必ず同じ部署、同じ仕事に戻るのではなく、毎回リセットして戻る形にしているのも、働きやすさを追求した結果です」(吾郷氏)。こうした配慮は健康経営の支援を事業とする企業らしいところかもしれない。

また、「フルリモート、フルフレックス」というキーワードで、全国規模でのエンジニア募集もしている。介護、子供の教育などさまざまな事情で地方を離れられない人にも就業のチャンスを提供している。

キャリアパスの制度も今年から刷新した。技術職のグレードを八段階にきめ細かく分け、役割定義書(Job description)を作成した。スペシャリストのカテゴリーでIT職を設定し、スーパーエンジニアとして専門分野を極めることも可能になった。

「当社に限りませんが、やりがいとしては、モノを作れること、それが実際に動くこと、使い勝手に対するユーザーのフィードバックがあること。特に若手に関して言えば、スキルアップし、それまでできなかったことができるようになることだと思います」(水守氏)。

健康・メンタルヘルス分野へのIT活用は、さらに開拓の可能性がある。

「例えば我々はB to B to E(Employee)という呼び方をすることがあります。しかし、EはC(Consumer)とは異なるものの、Cの側面も持っています。個人の働き方は一人ひとり違い、異動や転職などもあるからです。従ってEとCのデータを関係させる手法も考えられます。今後はデータのポータビリティも一つの鍵になるでしょう」(吾郷氏)。
またデジタル時代の働き方とストレスの関係などについての研究成果は今後、続々と出てくると思われる。そこから新たなビジネスやソリューションが生まれるだろう。「これから新しいことをやりたいと思っている人、ぜひここで一緒にやりましょう」(水守氏)。

ARMのIT部門の拡充が進んだのはかなり最近のことである。部門の伸びる余地はまだまだ大きく、エンジニアが活躍するチャンスは広がっている。上場企業であり、経営は安定している一方で、ベンチャー的開拓精神の持ち主も満足できる場と言えそうだ。

ライター プロフィール

織田 孝一(おだ・こういち)
1959年生まれ。学習院大学法学部政治学科卒業後、広告制作会社および人材採用サービス会社の制作ディレクターを経て、1989年にライターとして独立。ビジネス誌などの他、企業広報・採用関連の執筆も多い。現在注力しているジャンルは、科学技術、IT、人材戦略、農学、デザインなど。

リーベルコンサルタントから一言

雇用流動性が高まる現在では、働く企業を選択する価値観も多様化してきています。アドバンテッジリスクマネジメントは、転職者の方にご紹介すると最初は知らなかったという方も多いのですが、「毎年ストレスチェックを受けたりしていませんか?」とお話しすると受けている方も多く、その様な企業の健康経営をリードする自社サービスを持っているB to B to E (Employee)に貢献できる会社ですとお話しすると興味を持たれる方も多いです。

企業の健康経営をリードするサービスを提供している会社だからこそ、自社社員の労働環境も大切にしていて、できるだけ柔軟な労働環境を作っている風土が転職者の興味も引き付けているのではと感じます。システム企画やプロジェクトマネジメントの人材だけではなく、スペシャリストとして内製化を推進する技術志向の人材も幅広く求めていますので、ご興味のある方は是非一度ご連絡ください。

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