転職活動が終わり、退職交渉がスタートした後は、現職との退職手続き、転職先への入社手続きが発生します。
企業毎に退職手続き、入社手続きの流れや詳細な内容は異なりますが、どの企業でも必ず発生する手続きや必要とされる書類は存在します。それらを事前に知っておくことで、退職・入社の手続きをスムーズに進められますので、当コラムでは、どういった手続き・必要書類が存在するかを簡単にご紹介します。(2024年9月時点)
ちなみに、以降でご紹介する内容は退職交渉が完了している、あるいは完了目途が立っている方向けですので、それ以前の退職交渉についての詳細を知りたい場合には以下のコラムを参照ください。
第846章 さぁ、いざ退職!・・・退職交渉ってどうやるの? — 退職交渉の進め方 —
退職時の手続き
(1)退職届の提出
退職届は、退職の意志確定の証明として提出します。退職届の提出方法は企業毎に異なり、フォーマットが決まっている事もあればフリーフォーマットの場合もありますし、電子データやWebで手続きが進められる場合もあれば、手書きでの書面提出が必須の場合もあったりしますので、就業規則に定めがあるかを事前に確認しておきましょう。提出期限も要チェックです。
(2)貸与物の返却
会社から貸与されているものは、退職時に返却する必要があります。貸与物は色々ありますが、よくある返却が必要な物は以下です。
- 社員証
- 入館証
- 名刺
- 健康保険被保険者証
- 社用の携帯電話/スマートフォン
- デスクトップパソコン、ノートパソコン、タブレット、モニター
- ケーブルなどの周辺機器
- 業務に関するデータ、業務資料、マニュアル
客先常駐をされている場合は、常駐先の入館証も返却が必要です。上司から指示があると思いますが、誰に、いつまでに返却が必要か、事前に確認しておくと良いでしょう。
医療機関で提示する健康保険被保険者証(※1)は、会社が加入している健康保険組合が発行しているものであり、転職すると所属する健康保険組合が変わるため、扶養家族分も含め、保険証の返却が発生します。退職日まで使用でき、退職日の翌日以降に郵送などで会社へ返却する事となりますから、郵送先やいつまでの返却が必要かを確認しておくと安心です。
(※1)現行の健康保険証はマイナンバーに統合されるため、2025年12月2日以降は上記とは異なる対応となる見込みです。
(3)転職先に提出する書類の受け取り
退職時には、次の会社へ入社した際に提出する書類も受け取る必要があります。受け取り漏れがないよう、転職先から貰う入社手続きの案内も併せて参照し、事前に何を現職から受け取る必要があるかをリスト化しておきましょう。以下は、退職時に受け取る書類例です。
- 年金手帳(在籍期間中、会社が保管している場合)
- 雇用保険被保険者証(在籍期間中、会社が保管している場合)
- 源泉徴収票
- 退職証明書
- 離職票
年金手帳(※2)、雇用保険被保険者証(※3)、源泉徴収票は、どの企業へ入社する際も提出が必要な書類です。特に源泉徴収票は、退職月の経理処理が終わり、給与額確定する日=退職日から1か月以内に交付されます。念のため、いつ頃に郵送されるかの確認もしておきましょう。
(※2)転職先での年金加入の手続きに必要な書類です。なお、2022年4月から年金手帳が廃止になり、2022年4月1日以降初めて年金制度に加入する方は、年金手帳ではなく基礎年金番号通知書が交付されます。
(※3)雇用保険加入者であることを証明する書類です。入社時に雇用保険への加入手続きを会社が行っているため、正社員や契約社員であれば自動的に加入しており、雇用保険番号が転職先へ引き継がれるため、転職先への提出が必要です。
退職証明書は文字通り退職したことを証明する書類で、転職先から提出を求められることがあります。これは入社手続きの際に要否を確認しましょう。離職票と異なり、退職証明書は会社が独自で発行するものですから、事前に人事や総務へ伝えておけば、退職手続き時に受け取ることも出来ます。
離職票は正式名称を雇用保険被保険者離職票と言い、失業手当を受給するための書類です。次の転職先が決まっている場合は失業手当を受け取ることはできませんので特に使い道がない書類ですが、通常は次の転職先が決まっていてもいなくても、退職する会社を通じてハローワークから発行されます。離職票は、退職日に受け取るものではなく、一般的には退職日の2~3週間後に郵送で届きます。
入社時の手続き — 必要書類の提出 —
以下は、多くの企業で中途入社時に提出が求められる書類です。
- 年金手帳
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
- マイナンバー
- 扶養控除等申告書
- 健康保険被扶養者異動届
- 給与振込先届出書
前半の年金手帳、雇用保険被保険者証、源泉徴収票は先述した退職時の手続きにも登場しましたね。
後半の扶養控除等申告書(※4)、健康保険被扶養者異動届(※5)、給与振込先届出書は、転職先の企業が書類を用意し、渡されます。
(※4)税金や社会保険の手続き、諸手当計算などに必要です。扶養家族がいない人も提出します。
(※5)扶養家族がいる場合、提出が必要です。
また企業によっては上記以外に、以下のような書類の提出も求められます。
- 入社承諾書、入社誓約書
- 退職証明書
- 健康診断書
- 住民票
- 資格証明書
- 卒業証明書(第二新卒者の場合の提出を求められる場合があります。)
健康診断書は、転職先企業に指定された検診場所で健康診断を受ける必要がある場合もあります。いずれにしても必要な場合、入社手続きの案内に必ず記載がありますので、是非上記の項目がないかは確認してください。
意外とやる事が多い
以上、ここまで読んでいただいて分かると思いますが、退職・入社手続き共に、意外とやる事は多いです。また企業によっては独自のルールが設定されている事もありますから、退職が決まり次第、早めに現職の就業規則&転職先からの入社手続き案内を確認して、提出書類の確認、受け取るべき書類のリスト化、発行に時間のかかる書類はいつ受け取れるかのスケジュール確認等、必要なものを洗い出し、チェックリストを作って準備を進めましょう。
なお、入社手続きの連絡は、退職日が確定した日から入社日の約1ヶ月前の間に転職先から直接メールや書面でくるのが一般的です。転職先が決まってから入社日まで日が空く場合、転職先から連絡がなく本当に入社できるのか不安に思われる方もおられるため、いつ頃入社手続き関連の連絡が来るかはオファー受諾後に念のため確認しておいてください。
また、転職先からのメールが迷惑メールフォルダに入ってしまい手続きが進まないとか、転職先に伝えた自分のメールアドレスが間違っていてメールが届かない、ということも時々発生しますので、履歴書に記載したメールアドレスが正しいかを念のため確認しておき、同時に、転職先のどのメールアドレスから連絡が来るのかもあらかじめ確認して迷惑メールフォルダに入らないようフィルター設定を変更しておきましょう。