心理学から学ぶ新・仕事術

現代に生きるビジネスパーソンへ。心理学からアプローチした仕事術をお伝えします。

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第23話

あなたは会社から期待されていますか?

— 自分の役割を振り返り、期待されていることについて改めて確認してみよう —

「会社から大事にされている」という感覚

毎週木曜日の18:30から社会人大学院で授業をしています。昨日は「会社をどう捉えている人が仕事を頑張ろうと思えるのか?」というテーマでした。「日本の会社は以前よりも人を大事にしなくなった」と言われていることを踏まえ、「会社は私のことを悪いようにはしないだろう」「会社は従業員を大事にしている」などというように、「会社から大事に扱われている」という感覚を持っている人は、仕事を頑張ることができるのではないか?というのが議論のスタートです。

大事にされている人は頑張るのか?

「会社から大事にされていると思っている人は、会社のために頑張ろうと考えて仕事を頑張る」という主張に対して、皆さんはどのような意見を持たれるでしょうか。授業の場では、「NO」という意見が大半を占めました。「会社から大事にされていると思っている人は、会社を辞めないだろうけど、だからといって会社のために頑張ろうとはしないのではないか」という主張が大多数でした。「大事にされている」ことは居心地の良さにはつながるけれど、だからといって頑張るという行動にはつながらないということです。

「会社から期待されている」という感覚

「大事にされている」という感覚が却下されました。それでは、会社をどう捉えている人が「仕事を頑張ろう」と思うのでしょうか。この問いに対しては色々な答えがでました。例えば「ここ(会社)にいれば、成長できそうという期待を持てる」「会社は従業員を公平に扱っていると思える」などが挙がりました。

その中で、多くの人が納得した答えが「会社から期待されているという感覚を持てれば仕事を頑張る」というものでした。「それはどんな年代・どんな仕事をしている人にもあてはまりますか?」と問い返した所、答えは「YES」でした。どうやら私達には「期待されたい」「期待に応えたい」という欲求があるようです。

人はどんな時「会社から期待されている」と思えるのか?

「会社から期待されている」という感覚が重要となりましたので、次に「会社は従業員に対して『私は会社から期待されている』という感覚をどのようにして持たせることが可能なのか?」という問いに進みました。ここでは「高い評価をする」「重要な仕事を任せる」「大事な会議に出席させる」「能力を伸ばす仕事を与える」などがあがりました。

ここで問題が浮かび上がります。全ての人に高い評価を全員に与えることはできませんし、同様に全ての人に重要な仕事を任せることも難しいです。つまり、会社は従業員全員に対して「会社から期待されている」という感覚を持たせようとすることは、思いのほか難しいということです。

会社からの期待を感じ続けることの難しさ

当日の授業では「オーダーメイドでその人に役割を与え、その役割について合意形成をはかり、結果について次につながる形でフィードバックをしていけば、どんな社員にも『会社から期待されている』という感覚を持たせることができる」という結論に至りました。

同時に、期待は相対的なものなので、「あいつは自分より期待されている」と思えば、どんなに会社が努力しても「自分は期待されていない」と考える人は一定数で出てくるのではないか、という疑問も出てきました。

「期待されているか?」から「何を期待されているか?」へ

「あなたは会社に期待されているか?」と聞かれると、ドキっとする方が少なくないでしょう。「期待されているか否か」という問いは建設的でない場合もあるので、「期待されていることは何か」という問いで考えた方が良いです。

この問いに応えるべく、

  1. 現時点での自分の役割、特に自分にしかできない役割を精査する
  2. その役割への自分の受け止め方を検討する(不満がある場合にはどのような役割を求めるのか、その役割を自分が得るために何をすべきかを整理する)
  3. 役割の結果について自己評価をし、さらに周囲の他者(上司・同僚・部下)からフィードバックを求め、次にどう動くか決める

といった作業をしてみましょう。

期待という部分では(3)が特に大事です。
何故ならば、(3)を通じて「もっとこうした方がいい(さらなる期待)」という点を確認することができるからです。

「期待される」ことも大事ですが、「期待を確認する(作り出す)」も大事です。ご自身の現時点での役割を振り返りつつ、期待されていることについて改めて確認してはいかがでしょうか。

まとめ

  • 「会社から期待されている」という感覚を持つ人は仕事に対するモチベーションが高い。
  • 会社は従業員に対して様々な働きかけをして、「会社が期待している」ことを伝えようとするが、「いつも・全員に」伝えることには限界がある。
  • 自分の現時点の仕事上の役割を振り返り、かつ周囲ともコミュニケーションを取ることで、自分に期待されていることをチェックし、「期待されている」という感覚を持ち続けやすくなろう。

筆者プロフィール

坂爪 洋美
坂爪 洋美
法政大学キャリアデザイン学部 教授
慶應義塾大学大学院経営管理研究科博士課程修了 経営学博士。専門は産業・組織心理学ならびに人材マネジメント。主要な著書は『キャリア・オリエンテーション』(白桃書房、2008年)等。
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