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  4. モデラーとは?

著者プロフィール

竹政 昭利(株式会社オージス総研)
1985年に某システム会社入社。AI(人工知能)関係のシステム開発に従事。1994年に株式会社オージス総研入社後はオブジェクト指向システム開発を中心にコンサルティング、開発者向けトレーニング、セミナーの講師を行う。『はじめて学ぶUML』、『ビジネスマンのためのUML入門』等、UMLに関する著書多数。

第1章:モデラーとは?

モデラーと聞くと、まずは模型を作る人を思い浮かべるでしょうか?
辞書を引くとモデラーとは、「模型(塑像)製作者」とあります。

ここで紹介するモデラーは、「ITに関する全ライフサイクルにわたって形式化したモデルを使用することで、高品質なITサービスを提供する人」のことを言います。

現実にあるものをモデルで表現する、という点ではここで紹介するモデラーも模型製作者と同様です。

しかし、モデラーは模型製作者と異なり、単に形を真似るだけでなく、その本質をも表現することが求められます。

たとえばビジネスモデリングでは業務の流れを、システム開発ではシステムの仕様を明確にする必要があります。それを今までは設計者が自然言語や独自の表、図などで表現してきました。それに対してモデラーは、これを図1のようなモデルで表現していきます。 その際にモデラーは分析領域の本質を捉えた上で、必要に応じ複数のモデルを作成していきます。

モデルを作成する際には、一般的には世界標準の表記法でもあるUML(Unified Modeling Language)を使用します。しかし必ずUMLを使用しないといけない訳ではありません。必要ならば、それぞれのフェーズ(段階)にとって最適な表記法を選択します。ここで重要なことは、どのような表記法で描くかではなく、分析対象を適確に表現したモデルにより、いかに他者に分析内容を正確に伝えることができるかにあります。

モデラーの活躍する場面は、ビジネスモデリングをはじめ、開発から、運用までITに関する全ライフサイクルにわたります。そのため、一口にモデラーといっても、そのフェーズにより行なう作業は異なります。
そして通常、全てのフェーズのモデル化の作業は1人のモデラーが行なうのではなく、複数のモデラーがそれぞれ得意分野を担当します。

より具体的なイメージを掴んでもらうために、各フェーズで何をモデル化するかを説明します。

  • ビジネスモデリング
    現状(AS-IS)および、理想(TO-BE)のモデルを構築、分析することは、経営戦略策定、IT戦略策定には不可欠です。
    このフェーズではビジネス上必要な人や物の関係、業務の流れをモデル化します。
    またJ-SOX法対応のための、業務の可視化なども行ないます。
    このフェーズで作成するモデルは、必ずしもシステム化は意識していません。
    そのためモデル化する対象業務の知識が豊富であることが望ましいということになります。
  • 要件定義
    このフェーズでは、エンドユーザーのシステムに対する要望をモデル化します。
    まず、どこまでがシステム化対象なのかをモデルで明確にし、そのシステムがどのような機能を提供するのかを明示します。
    なお、ここではシステム化を意識して作業を行ないます。
  • 分析
    このフェーズでは、システム化対象領域をエンドユーザの視点でモデル化します。分析対象をありのままに捉え、モデルとして表現します。つまりここでは、その対象がどうなのか(WHAT)にのみ着目します。このフェーズではまだ、どのようにシステムを作成するかの手段(HOW)については見ていきません。
    そのため、開発環境に依存しないような、汎用的で保守性の高いモデルを作成することを目的とします。
  • 設計
    システムをどのような手段(HOW)で作成して行くかをモデル化します。ここでは、OS、ネットワーク、開発言語、ツール、フレームワーク、パターンなどの知識が不可欠になってきます。
    作成するモデルも、上記のような環境に特化したモデルになっていきます。
  • 実装/テスト
    設計モデルをもとに、開発言語で実装をしていきます。そして設計、実装を検証するためのテストも行ないます。テスト計画もモデルで表現することができます。
  • 運用
    システムのライフサイクルを考えると、実装、テストを行いリリースするだけでは不十分といえます。リリース後の運用もモデルで表現することで、問題発生時の原因究明や対策が明確になります。

このようにモデルを使用した開発を、”モデルベース開発”と言います(図2)。
この“モデルベース開発”は、最近ではさらに進化を遂げています。

そして、これからのモデルベース開発で必要とされるのは、複数のモデルの整合性をとり、成果物を統一し、関係者の合意をとっていくことができる”標準化されたプロセス”に裏付けられたモデリング力です。

“標準化されたプロセス”は、モデル化の手順、ガイドライン、リファレンスモデル、及びテンプレートを備えます。またモデルベース開発を実践する上で忘れてはならないのが、”ツール”です。ツール利用のノウハウを活用することで、上流から下流までシームレスにモデル化をサポートします。

各フェーズで行なうモデル化の手順は一般的には以下のようになります。

  1. 対象としている領域、問題、背景などの情報収集を行なう。
  2. 情報の分類、整理を行なう。
  3. 因果関係の発見。
  4. 抽象的化しモデル化する。

詳細内容は、先ほど紹介したフェーズごとに手順が開発プロセスとして定義されています。

実際のモデラーは、常に物事を深く考えようとしており、それが習慣化しています。
そしてビジネスとITの掛け橋となるべく、日夜努力を重ねています。彼らは、新しい知識の吸収に貪欲で、忙しい中であっても勉強会などを自ら企画します。それは単なる技術オタクではなく、ビジネスマンとしても、妥協はしていません。チャンスを探し自らのステップアップのために、新たな仕事を経験したいと思っています。

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