- プロフィール
- アメリカやドイツで長期の海外生活を経験後、日本のシステム開発会社に入社。その後ベンチャー、インドのIT専門大学院への留学を経て、日本オラクルに入社。
ベンチャー企業から大手外資系ソフトウェアベンダーへの転職を遂げた本間直さん。インドのIT専門大学院留学中での転職活動という特殊な状況の中で、転身を可能にした要因は何だったのか。リーベル代表の石川が聞いた。
始めての転職でベンチャー企業へ
石川:海外生活が長かったようですね。
本間さん:父の仕事の関係で、幼稚園から小学校高学年までアメリカで過ごし、帰国して日本の小中学校に通学し、その後ドイツに渡り、高校時代はインターナショナルスクールに通いました。そして、高校卒業後はアメリカの大学へ。何度か環境の変化を経験する中で、新しい場所でも自然とスピーディーに順応できるような資質が備わりましたね。卒業後は帰国して技術系の会社で自分の能力を生かそうと考え、小規模のシステム開発会社に就職先を見つけました。
石川:社会に出て1社目の会社。特に印象に残っていることは?
本間さん:数百人が関わる大規模な会計システムの開発に携われたことですね。私は設計や開発などの実務作業を担当しつつ、5〜6人のチームのサブリーダーを務め、チームのメンバーに指示を出すなどの役割を担っていました。そこでは、いかに物事を噛み砕いて説明することが大切かを学びましたね。言葉が足りないと相手の理解が及ばなくなる。だから、難解な内容の場合は図で示すなど、説明の手法に苦心した。そのコミュニケーションスキルが身に付いたことは大きかったと思います。
石川:その会社を辞められるわけですが、理由は?
本間さん:ひとつは、クライアント向けの社内システムを扱っていたため、完成後は自分では使ったり触ったりできないこと。もう一つは開発途上で要件が度々変更されることが多かったのですが、それを孫請けの会社であるがゆえに従わなければならなかったこと。一般ユーザーが使えるような自社製品を持っている会社に移りたいと転職を決意しました。
石川:大規模システムの開発に携わっているエンジニアが、プライムで受けていないためにほんの一部しか任されず、自分の担当した部分が全体にどのように影響しているか見えない、達成感がないというのは非常に多く見られること。その典型だったようですね。
本間さん:そうです。そこで、リーベルに登録し、転職先の紹介をお願いしたわけです。そのときはコンシューマー向けの製品を世界に展開しつつ、Java関連の新しい技術の開発を進めているベンチャー企業に転職しました。3年前のことでしたね。私は英語ができることもあって、各国の技術者の対応や製品の開発を担当することになりました。
インドへのIT留学
石川:転職先での仕事はいかがでしたか。
本間さん:海外の技術者とのグローバルな仕事は私にとって刺激的なものでしたし、最初は楽しかったですね。しかし、その後新技術の開発が一時中断となったこともあり、入社当時のワクワク感が徐々になくなっていった。また自分のキャリアを考える時期に来たと思いましたね。
石川:そして、その会社を辞めて、なんとインドのIT専門大学院に留学!
本間さん:大学では文系の勉強しかしなかったので、自分の中でもどこか引っかかるところがあり、理系の知識をしっかり身に付けたいという気持ちがありました。インドを選んだのは、IT分野で成長著しい国の教育がどんなものか見たいという好奇心からですね。
石川:キャリアの決断も、留学も、抜群の行動力ですよね。インドへの留学は実りあるものでしたか?
本間さん:正直その大学院は期待通りのものではなかったですね。教えている内容が古く、実践的ではない。大学院といっても研究がメインではなく、授業とテストがほとんど。大学と変わらないような内容でした。生徒も、これはインドのカルチャーなのかもしれませんが、間違ってもいいから、とにかく発言しようとする人が多かった。私が聞いていると、10人答えて8人は間違っている(笑)。もっと考えてから答えればいいのにと思うのですが。インドでは、道を聞いても間違って教えられることが多い。これは私の個人的な意見なのですが、知識がなくても「知らない」と言えない国民性なのかもしれませんね。
リーベルとの連携で2度目の転職を成功に
石川:留学中も私とは定期的にメールのやり取りをしました。
本間さん:留学期間は1年の予定でしたが、帰国してから探したのでは遅いので、石川さんに色々と相談に乗ってもらいましたね。自分が一番やりたかったのは開発でしたが、自分の経験ではバックグラウンドが弱いと感じていたので、開発以外にも目を向けて、サポートやプリセールスの仕事の内容なども教えていただいた。聞いているうちにそうした仕事にも興味を持つようになりました。そこで、留学中の一時帰国のときに石川さんに面接のアレンジをお願いしたわけです。
石川:メールのやり取りといい、面接のオーダーといい、積極的な姿勢、行動ですよね。そこでアレンジしたうちの1社が日本オラクルでした。
本間さん:業務内容は、アメリカで開発された最新製品を日本に出荷するために、調査や検証を実施し、国内での製品リリースにつなげていくもの。特殊な仕事なだけに、説明されてその言葉の意味はわかるのですが、具体的にどのような作業をするのかイメージが沸かなかった。ただ、開発元のアメリカチームやテストを実施する中国チームとのやり取りがあり、前職で楽しさを見出したグローバルな仕事ができること、さらにまだ世の中に出ていない最新の製品に触れられることに魅力を感じました。
石川:そこで、日本オラクルへの興味がグッと上がった。私もこの機会を逃してはならないと、本間さんには一時帰国時の滞在期間を数日延ばしていただき、一方で人事の方と交渉し、2次面接と最終面接をセッティング。日本オラクル側の柔軟な対応のおかげもあり、内定に漕ぎ着けました。これも縁ですよね。
長期的なスパンで仕事に取り組む
石川:外資系大手の日本オラクルに入社して、今までの仕事と違いを感じますか?
本間さん:一番の違いはスケジュールのとり方。中小やベンチャーだと短期の日程が中心で、1ヶ月以降のスケジュールが決まってないことが多い。それに対して日本オラクルでは、3月の時点で夏や秋のスケジュールを立てるなど長期のスパンで物事を組み立てていきます。また、スケジュールの進捗状況を、開発拠点であるアメリカやインド、テスト拠点の中国に確認を取りながら、定期的にチェックして進めていく、システマティックな部分も前職との違いでしょうか。
石川:教育制度や会社の設備などはいかがですか。
本間さん:どれを取ればいいかわからないくらい数多くの研修プランが用意されています。またそれを支えるシステムも充実。オンライントレーニングのためのシステムやクラス形式の講義のための予約システムなど、しっかりと整備されています。会社の設備も、世界各国をつないで電話会議ができたり、自宅からネットワーク経由で仕事ができるような環境が整うなど、そこは今までの会社との差を感じるところですね。
石川:では、最後に今後のキャリアプランを教えてください。
本間さん:とにかく今は新しい環境で勉強するだけですね。転職は人のつながりも仕事の幅も広がるという大きなメリットがあるので、私自身まったく抵抗がないのですが、今回もこのいい縁を活かして、自分がもっと成長していければと思っています。
石川:本間さんは、元々備わっている高いポテンシャルに加えて、何でも知らないことは勉強しようという意欲を持たれています。そして、まさに「思い立ったが吉日」ともいえる行動力もある。それらが転職を成功に導いたのでしょうね。本日は有難うございました。
ライター プロフィール
- 高橋 学(たかはし・まなぶ)
- 1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。