COLUMN
コラム:転職の技術
第953章
2020/01/31

黒字リストラと中途採用

中途採用市場は依然として活況ですが、昨年からは人員削減のニュースをよく聞くようになりました。ただ、今までのリストラとはちょっと違います。業績自体は好調でも人員削減を行うタイプで、いわゆる黒字リストラと呼ばれるものです。これはIT企業だけではなく、銀行や製薬メーカーなど、特に大手企業でよく目にする事象だと思っています。

過去20年の人員削減

これまでも大企業のリストラは時代の節目節目で行われてきました。思えば私が就活をしていた2003年当時は長引く不況やITバブル崩壊の影響もあり、大手電機メーカーは軒並み大赤字。一斉にリストラと構造改革を始め出した頃で、新卒採用もそのあおりをもろに受けていました。就職氷河期の真っただ中で、就活も苦戦する同級生が多くいました。

また、もう10年前になりますがリーマンショック時も当然採用はストップ。人員削減だけでなく、事業売却や企業合併などで業界が再編され、皆さんのキャリアにも少なからず影響が与えられたのではと思っています。

ただ最近の人員削減は、以前のそれとはまた違うものに見えてきます。

黒字リストラの背景

業績自体は好調でも、将来を見据えて人員削減や構造改革を行う、所謂「黒字リストラ」と称される人員削減が増えてきました。例えば、昨年人員削減を行った企業の中でも、およそ6割の企業は業績的には黒字だったとうデータがあります。新卒や中途採用もどんどん行いつつ、企業として効率化が見込める領域は大胆にコストカットを進める、将来のリスクを見越したリストラと言えます。

この背景には、いくつかの要因が考えられます。一つは、いずれやってくる不況に備えて体制をスマート化したいという思い。そしてもう一つは、デジタル活用による業務効率化の容易さがあげられるでしょう。個人的には今のAIやRPA技術が、人の代替となるほど優れたものか疑問が残りますが、以前より業務効率化のハードルはぐっと下がったのは事実でしょう。ITの進化が、少なからず人の仕事を奪っている典型です。

またもう一つの背景として、人材の流動性が以前より上がったことも要因と言えるかもしれません。新卒入社した企業で定年を迎える時代は終わりを遂げ、今は自分のキャリアは自分で切り拓く時代です。40代やそれ以上であっても、自身に市場価値さえあれば転職でも独立でも十分にやっていけるのです。

言い換えれば「大手に就職すれば安定」とも、言いきれない時代なのです。大手であれば経営自体は安定するかもしれませんが、社員の生活が安定するかはまた別。企業に胡坐をかかず、常にスキルアップを目指す必要があると言えるでしょう。

リストラと中途採用

弊社にも、人員削減のニュースがあったばかりの企業から、中途採用支援の依頼が来るケースがあります。業績的にはまだ苦しくも、企業を立て直すための人員を外部から採用したいと考える企業が増えてきました。今は人員削減と中途採用を同時並行で進める時代なのです。以前では考えられませんでした。

昔の日本企業は、中途採用より社内異動が一般的だったと思います。実際に私も、10年以上購買部門にいた人が、ある日突然営業に異動したケースを見ています。業務内容の違いから、本人もかなり苦労されていました。業務になれるまで数年はかかりますし、結果的にアンマッチということも多分にありうるのです。

今は営業にしろ技術者にしろ、専門スキルが重視される時代です。自分の力を高め、キャリアを歩んでいきましょう。

筆者 鈴木 裕行
コンサルタント実績
  • 紹介求人満足度 個人の部 第2位
    出典元
    株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT
    対象期間
    2014年4月1日〜2014年9月30日
    調査名称
    第12回転職エージェントランキング
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