公益社団法人日本生産性本部がまとめた2012年の新人社員意識調査によると、『今の会社に一生勤めようと思っている』と回答した人は約60%で過去最高になったそうです。2000年の調査時は約20%ですので約40ポイントの上昇です。
残念ながら、定年まで一つの会社で勤め上げると言う願望は今の時代では幻想と思わざるを得ません。
上記はある新聞の記事ですが、この記事のとなりの記事はタイトルが「NEC希望退職7月に受付(概要発表)」というものです。
偶然にも、一つは新入社員が『一生勤めたい』と願う記事であり、一つは理系の就職人気企業ランキングで上位に入っていた会社の『希望退職募集』の記事です。
今回希望退職募集の対象(40歳以上)となっている方がNECに入社した20年前(1992年)は理系就職人気企業ランキングで2位です。
この時代はソニー、NECが常連でした。当時は全くこのような状況になることは想像していなかったと思います。
この話題は特別な企業の話ではありません。日本航空の例もありますし、すべての企業にあり得る話です。経営の悪化は外部要因があったとしても経営者の責任です。経営層でない一社員(管理職を含め)ではどうにもならない、コントロールできないところです。
『大企業志向』や『定年まで勤める』という考えは決して悪いことではありません。しかし、安定志向で大企業に入社し『今の会社で一生勤めたい』と思って会社生活を送っている人ほど危機に弱く、どこにも転職できない可能性が高くなります。
理由は、いつでも転職できる準備をしていないために“A社で仕事をしていた”という以外のスキルや経験がないからです。すなわち、ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル。他社でも通用するスキルともいえます。)を身につけていないことが多いからです。
ビジネスパーソンとして重要な事は、入社したら終わりということでなく、常に危機に対応できるスキル・経験を積んでおくことです。できないときは社内異動もありますし、転職という方法も選択の一つです。
20年先、ましてや20代の方が定年退職時の状況を想定することは不可能です。可能な事は、いつでもいかなる事態にも対応できるスキル・経験を身につけておくことです。
最も信頼できるのは、時代の要求に応じた自分自身のスキル・経験です。
<コンサルタント TI>