日本最大級のSIerとして、社会の基幹を担う重要かつ巨大なシステムを数多く構築してきたNTTデータ。全国銀行データ通信システム(全銀システム)、気象庁地域気象観測データ通信システム(アメダス)、郵便貯金システム、社会保険システムなど、その実績は枚挙にいとまない。
もともと主に公共・金融分野の大規模システム開発を担ってきた同社だが、ここに来て一般企業向けの法人分野にも積極進出。2007年3月期決算においては、国内SIerとして初めて売上高1兆円を突破するなど、さらなる成長を遂げている。
好調な業績を背景に同社では、年間200人規模の積極的なキャリア採用を実施中だ。公共・金融・法人の各分野それぞれの業務内容や、求める人材像について、人事部採用担当の石川信貴氏に話を聞いた。
公共・金融・法人3分野の売り上げ比は1:1:1程度に
NTTデータの法人分野での事業拡大が顕著になってきたのは、前3カ年中期経営計画(H16〜H18)からだ。「公共・金融という従来から強みを有する分野に留まらず、法人という新しい分野に踏み出していかないと、売り上げ1兆円企業の将来像が描けないと考えたのです」と石川氏は語る。
その結果、法人向け事業はここに来て急拡大。今や、公共・金融・法人の3分野の売り上げの割合は、ちょうど1:1:1程度にまでなっている。
法人分野への進出と歩を合わせるように、同社ではキャリア人材の採用にも積極的に乗り出すようになった。ここ数年の中途採用実績は、年間120〜150人をコンスタントに採用しており、今期も200人規模の大量採用を計画している。法人分野での中途採用数拡大に連動するように、公共・金融の分野での採用も次第に増加。今では単体で約8300人の社員のうち、中途採用人材が約700人を占めている。
現在進めている新3カ年中期経営計画において同社では、世界的に事業を展開する企業のニーズに答えるべくグローバル展開を標榜。更に「売り上げ1兆円には到達したが、これからは利益の拡大が必要。その為には、既存のお客様とのパートナーシップをより密にしなくてはらない。そうした活動の延長が、お客様満足度No,1企業の追求であり、社会的責任も果たすことが出来る」とする。こうしたビジョンを実現するためにも、引き続き、優秀なキャリア人材の確保に努める構えだ。
それではここからは、法人・金融・公共各分野別に、業務の内訳や求める人材について見ていくこととしよう。
法人部門‐既存顧客との関係を深めつつ製造・流通関連システムでのビジネス拡大を狙う
NTTデータの法人向け事業の伸びは目覚ましい。2003年度に全体の21%だった法人分野の売り上げは、今や前述のとおり、公共・金融の両分野と肩を並べるまでに。この急激な成長の理由については次のように語る。
「公共・金融分野で培った『24時間365日絶対に止まらない』ミッションクリティカルなシステム作りを法人分野でも評価していただけたことがまず1つ。また、当社では『お客様と共に成長していく』という考えから、お客様企業と共同出資をしてシステム子会社を立ち上げる取り組みも数多く行っており、それも売り上げ増に貢献しています」
今後は、主流であるテレコム・メディア・運輸・建設・サービスと並んで、急拡大している製造・流通業の顧客との関係を深めることに力を注いでいく。「製造・流通業は日本の強みでもあるし、国際競争力も高い。そうした企業をお客様に持つことで、当社としてもグローバル展開を進めていきたい」と石川氏。また、市場が拡大している組み込みソフトの開発にも積極的に進出する構えだ。
また、法人分野は、NTTデータグループとしてのソフトウェア開発力強化のための変革にも努めている。その具体的な内容としては、モノ作りの楽しさを実感しながら、コアとなる部分については現場力を高め、開発力の空洞化を防止する。そうした事が、NTTデータグループ全体での開発力・製造力を強化していくと考えている。
さらに、業務の急拡大に伴い、法人部門ではノウハウを持つキャリア人材の採用を急いでいる。特に今後注力していく製造・流通関連や、通信業界システム関連、Webシステム関連などでは期待が高い。
職種的にはプロジェクトマネージャー、アプリケーションエンジニア、インフラ周りのエンジニアの3つ。全職種に共通して求める人材像についてこう語る。
「何より、リーダー的な動きができることが大事。若手の人でリーダー的なポジションについた経験が浅くても、自分がオーナーシップをとって動いてきた、という方であれば問題ありません」。その上で、アプリケーションエンジニアについては顧客企業の業務に詳しい人を、またインフラ周りのエンジニアについては特定の製品のみに詳しいというのではなく、様々な製品や方式を知った上でそれらをインテグレートできる人材を求めている。
法人分野では、人数の半分以上を中途入社人材が占めるといった部署もあるほどで、「新卒、中途といった区別は全くない」と石川氏。さらに「これは法人に限ったことではないですが、当社では社会にインパクトのある大きなシステムの開発を、主体的にプライムでやれる。これは非常に大きな魅力ですね」と仕事のやりがいを語る。
金融部門‐システム共同化の流れが新たなビジネスを生む
一方、金融分野も非常に好調だ。NTTデータはもともと、特定のハードウエアに縛られないマルチベンダとして、業界中立の立場でシステム開発を行ってきたのが特徴。その中で、特定のお客様に対し、競争力向上・企業価値向上に貢献するというミッションのほかに、業界共同のシステムを作り、各社に利用いただくという案件も数多く手懸けてきた。
「当社では、各業界に、共同利用型サービスのビジネスモデルを積極的に展開しております。同一業態の複数のお客様でシステムを共同利用していただくことにより、各社が競合しない共通の業務処理分野でのスケールメリットが得られ、経営資源を、より顧客サービスの充実などに振り分けていただくことが出来ます。過去の豊富な経験から、こうした案件に高レベルの対応ができる。それがビジネス拡大の要因の一つにもなっていると考えます」と、説明する。
また、金融業界では金融の法制度の抜本的改革に伴い、銀行・生保・損保などの業態の垣根を越えて扱える商品・サービスの幅が広がってきている。各金融機関もそのような状況下における「次の一手」を模索している状況にある。NTTデータは金融分野において極めて幅広い領域業態についてシステム開発の実績があることから、俯瞰的な視点を持った大胆な提案ができるのも強みといえよう。
金融部門では特定のスキル、特定の経験にこだわらず多様な人材を募集しているが、資質として最も強く求めるのは「チームをまとめ推進していく力」だと石川氏は指摘する。
「我々の行う仕事は、お客様の潜在的ニーズを顕在化させ、それを最適な形でシステム化するにはどうすればよいかを考えること。それを遂行していく上では、ただ単に明示されたやるべき仕事を高いレベルでこなすだけの人材ではもの足りない。チームをまとめ上げて思い描いたことを実現していくリーダーシップや創造力が求められます」。
キャリアイメージとしては、プロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーを志向している方。大規模なシステム開発に携わった経験がなくても、例えば4〜5人のメンバーをマネジメントした経験がある方や、複数の会社が参画するプロジェクトでシステムを作り上げた経験があるような方は十分に活躍いただけるだろう。
また、金融の個別業態に関する高度な業務知識があれば、必ずしもシステム開発に携わった経験がなくとも活躍の場があるという。「これまで金融機関にお勤めになっていて、社内でユーザーとしてシステムを使う側だった方々は、技術的な知識は多くないかもしれません。しかし、その会社ないしその業界の特性を踏まえつつ、”こうしたらもっとシステムの使い勝手が良くなる”といった勘所をご存知ですので、システムの企画提案やシステムの分析といった領域で力を発揮いただけます」
NTTデータの金融部門での仕事の魅力について石川氏は「業界横断的なものも含め、社会に大きな影響を与えている社会情報インフラシステムの構築にも取り組めるのは当社ならでは。その中で特定のお客様との強力なリレーションシップが構築出来るのはもちろん、幅広いお客様とお付き合いができ、ビジネスパーソンとしての視野も広がります」と強調。さらに「超上流工程からサービス開始後のシステム管理まで、ありとあらゆる業務に携わっているため、システム開発の醍醐味をいかようにも経験できる。「狭く深く」スキルアップしていくことも可能ですし、様々な領域の仕事を経験しながらキャリアアップしたいという思いも、NTTデータの中で実現できます」と語った。
公共部門‐他社では経験できない大規模なシステム開発に携われるのが魅力
公共部門は、長年に渡り同社の根幹を支えてきた部署だ。例えば公共ビジネス推進部技術戦略部 オープン技術推進担当は、公共部門の様々なシステム開発において、新技術や標準技術に基づくアーキテクチャの構想・設計をリードし、更にAP(アプリケーション)の効率的な開発も支援するAPアーキテクトの集団だ。メンバーの5〜6割は中途採用の人材だという。
「公共部門では長年、メインフレームを使ったレガシーなシステムを多く作っていましたが、ここに来て官公庁などのシステムでも急速にオープン化が進んでいます。となると当社がこれまで培ってきたノウハウだけでは対応しきれない部分も出てくる。そこを我々がサポートするわけです」
この部署に配属されたあるメンバーは年齢33歳。メーカーのシステム開発子会社に1年半勤務した後、外資系コンサルティング会社に移籍し、4年間、主にリース業のシステム開発に従事。3年前にNTTデータに入社した。NTTデータへの転職理由としては「公共分野のシステム開発は他社ではなかなか経験できない。これまでに手がけたことがない大規模システムの開発に携われるのが魅力でした」と語る。
入社後は医療のケアマネージャーシステムや社会保険システムを担当。現在は社内の施策に基づき、アーキテクト人材の育成に携わっている。「APアーキテクトとは何かについては様々な意見がありますが、我々が考えているのは、プログラミングや設計の知識をしっかり持ち、マネジメントと設計・製造の間を埋めてシステム全体のアーキテクチャを構想できる人材。こうした人材を、我々の経験を伝えながら育成しようとしています」
NTTデータに転職してきての感想として、「大きなシステムに携われるという仕事の面白さは想像どおり。また、NTTデータでは、週に一度、ノー残業デーが設定されていたり、働き過ぎと判断すると上司が『今日はもう帰れ』と言ってくれるなど、生活とのバランスをとりながら働ける環境が整っているのも良かった点ですね」と語る。
また、APアーキテクトを応募される方については、「来てほしいのは、基礎をきちんと習得している上で、常に最新技術をウオッチしている方」とのこと。さらに「公共部門に限らず、『この会社を変えていこう』という信念を持っている人と一緒に仕事がしたい」と力強く言い切った。
1つでもスペシャリティを持つ人にはためらわずに応募してほしい
ここまでの話を聞いてもわかるように、NTTデータでは、キャリア人材に対する入社後の壁は一切ない。
「当社は官僚的なイメージを持たれがちのようですが、実際は非常にオープンな雰囲気。仕事をする上で、誰が新卒入社で、誰が転職者などということも意識することはないですし、一般社員でも部長クラスの管理職と気軽に意見を交換できるなど上下の風通しも良い。入社したら、それは実感していただけると思いますね」と石川氏。もちろん、評価の面で転職者が不利になるといった事もない。
入社後の人事教育制度も整っている。グループ会社であるNTTデータユニバーシティにおいて、技術からヒューマンスキル、マネジメント、業界知識まで、多くのオリジナル研修を用意。それらを自由にチョイスして受講できる。また、入社2年目や5年目、新任課長等、社員の成長に合わせた階層別研修も設けている。
さらに特筆すべきなのが、「プロフェッショナルCDP( Professional Career Development Program )」の取り組みだ。「面談等を通じて、その人のキャリア志向や知識・経験等を確認した上でキャリアレベルを認定し、それに応じた能力開発や活躍の場を会社が用意するという仕組みです。これにより、プロフェッショナル人材を育成するとともに、社員の成長と会社の成長を連動させる事を目指しています」と石川氏は説明する。
こうした中、NTTデータではキャリア人材に「長く働いてもらうこと」を希望している。「様々な教育制度を利用しながら、当社で長い間キャリアを積んでいただくことが、その方の価値を上げることにつながると自負しています」と石川氏。それだけに採用にあたっては、「何をやりたいのかという明確なビジョン」を持っていることを何より重視する。
NTTデータというと「敷居が高い」という印象を持つ人も少なくないだろう。しかし石川氏は「確かに技術レベルは高いが、人を育てる環境は確実に備わっています」とした上で、「とにかく『自分にはこうしたスペシャリティがある』ということをアピールしていただくことを期待しています。何か1つでも尖ったものがある方には、ためらうことなく是非とも応募してほしい」と語る。
新卒時にNTTデータへの入社を希望したものの願い叶わなかったという人もいるだろう。そうした人材のいわば「リベンジ」も大歓迎だ。「中途採用では学歴なども一切関係なく、純粋にその方の社会人としての歩みで判断させていただきます。『成長した自分を見てほしい』と積極的に売り込んでいただきたいですね」と石川氏。このチャンス、見逃す手はないだろう。
ライター プロフィール
- 荒濱 一(あらはま・はじめ)
- 1971年、東京生まれ。上智大学文学部教育学科卒。高校教諭、タイ・インドでの広告代理店勤務を経て、1998年からライターとして活動を開始する。現在、ビジネス(特に人材・起業)、IT/デジタル機器、著名人インタビューなど幅広い分野で記事を執筆するほか、広告コピー分野でも活躍。
- ◇主な著書
- 『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)
リーベルコンサルタントから一言
日本を代表するシステムインテグレーターであるNTTデータ。この会社での仕事の魅力はとにかく大規模システムであるということです。その醍醐味を味わうことができます。
人気企業ですので新卒では狭き門ですが、近年中途採用も積極的に行なうようになり学歴不問、中途入社のハンディも全く無いなど非常に開けた会社となっています。キャリアパスも豊富で限りなく成長できる環境があります。積極的にチャレンジして欲しい会社です。